七宮昴(ななみやすばる)
プロフィール
小学生のときにギリシャ神話が大好きになり、14歳のとき、ルネ・ヴァン・ダール・ワタナベ氏の一連の著作に触れ、占いを学ぶ。大学では西洋哲学を専攻、卒業後はPCゲームの会社にてシナリオライターとして活躍。2000年、テレシスネットワーク株式会社に入社、占法監査室室長として、古今東西の占いをプログラムにするための仕様書を作成。2009年、七宮昴として独立。インターネットでのチャット、電話占いのほか、初学者に占いを教える講師業、プラネタリウム(http://xn--kiv180i.jp/)での天文のイベントなどを行っている。共著『正しい占いのすすめ』(河出書房新社)『努力!の天才思考術』(スリーエーネットワーク)。
インターネットサイト監修と原稿執筆を担当した占いサイト「前世如来星術」監修
無料占い「プルモア」
テレシスネットワーク株式会社にてチャット&電話占い「占い師の部屋」
プラネタリウムで星空の星座を見たことからギリシャ神話が好きになり、占いブームのまっただなかで少女時代を過ごしたことから、自然な成り行きで「占い師」へ。「好き」が仕事になった理想的な占い人生を紐解く。
目次
〜Vol.16 ギリシャ神話に恋した女の子が選んだ占い師人生 その①〜
小学生のときに見たプラネタリウムの星空に恋して
來夢さん(以下、來夢) 七宮先生は、伊勢山天愛先生からのご紹介で、本日インタビューをさせていただきますが、天愛先生と七宮さんはどういったご縁でしょうか?
七宮昴さん(以下、七宮) 最初に就職したのがゲーム会社で、ドラクエのようなゲームのシナリオライターをしていました。その後2000年に私にとって二つ目の会社「テレシスネットワーク(以下テレシス)」に転職をしまして、その社長さんが伊勢山天愛先生です。
來夢 学校を出て最初にやったのがシナリオライターだったんですか。もともと文章は達人だったわけですね。
七宮 達人というほどではないですが、文章を書くお仕事をしました。
実は、最初のゲーム会社には絵の仕事をするために入ったんですが、絵のうまい人はいっぱいいて。ところが、文を書く人がいなかったんです。それで、シナリオライターになりました。
ゲームの世界には、火の魔法や地の魔法が出てきますよね。私は14歳くらいから占いをやっていたので、アイデアを占いから持ってきてシナリオを書いていました。
來夢 14歳のときに占いと出会ったきっかけは?
七宮 実は私はギリシア神話が非常に好きで。現実世界でギリシア神話が使われている場面といえば、なんといっても星占いですよね。
來夢 そもそもギリシア神話が好きになったのはいくつなの?
七宮 はっきりと覚えていないのですが、たぶん、小学校4年生のときに、“少年自然の家”でプラネタリウムを見たのが最初だと思います。
來夢 小さい頃にプラネタリウムや夜空の星を見て、ギリシア神話にはまるというのは占いを生業とする人たち、私を含めけっこうお約束ですよね。
七宮 そうですね。最初はギリシア神話で、その流れから星占い、タロット占いに興味を持ったんです。大学ではもっと深めたくて西洋哲学コースを取りました。それでプラトンや、古代ギリシャの哲学者のことなどを勉強しました。大学4年間ですからたいしたことはできないのですが。
現在も、日本ギリシャ協会と日本エーゲ海学会に入り、ギリシャとつながりを持っています。
來夢 本当にギリシャ神話が好きなのね。私の亡き師匠ルネ・ヴァンダール・ワタナベ先生は、ギリシャと宮崎の親善大使でしたね。
七宮 そうなんですか? 私、ルネ先生にはものすごく影響を受けているんです。実は、ギリシャ神話と星占いを結びつけて私に興味を持たせてくださったのがルネ先生と言っても過言ではありません。もちろんお会いしたことはないのですが。
來夢 確かに星占いとギリシア神話を結び付けて最初に日本に紹介したのはルネ先生かもしれませんね。
七宮 中学生のときに読んだルネ先生の本に、『ヘルメティックアカデミー』のテキストが出ていたんです。その中に、アルケミー体操があるんです。1週間ごとに、「今週はなんとかのポーズ」というように、2年間ほど修行と称して真面目に毎日実践していました。
來夢:当時、雑誌の企画でルネ先生の合宿のセミナーがあり、私は必ず同行していたんです。ルネ先生は、「こっちのグループはアルケミー体操」などと分けていくのです。私はアルケミー体操じゃない子たちを連れて、違う勉強会をしていたんだけど。
七宮 祭壇をつくって神々に祈るということを私に教えてくれたのはルネ先生の本なんです。
來夢 魔法使いとか、そういうのもたくさん紹介してた。
七宮 ルネ先生といえば、指で切るダブルクロイツ。私はもうそれを真剣にやっていました。35年くらい前ですよね。
來夢 宮崎にあった海を臨む施設には、マントを羽織って魔法陣に立っている写真が貼ってあった。まさに「ルネ伯爵」。
ここで師匠のお話ができるなんてうれしいですね。ルネ先生にはお会いしたことはない?
七宮 ないんです、残念ながら。お会いしたかったんですけど。
來夢 ちょっと話を戻させていただきたいんですけど、小さな頃からギリシア神話が好きで、14歳のときに、ギリシア神話が星占いとつながっていることで好きになって、タロットカードなどいろいろされたということですが、それはお友達を占ってあげたということ?
七宮 はい。いわゆる「クラスの占い師」ですね。文化祭のときに占い師をやったことで、修学旅行のときは私の部屋の前に行列ができるという、あのパターンです。
ゲームのシナリオライターと占いの世界
來夢 中高生のときにずっと「実占」をなさって、大学はギリシャ哲学へ。
それで大学を出た最初の就職は、ゲームソフトの絵を描きたかったけれど、シナリオライターになった。そのゲームも、占いとギリシア神話がつながるから?
七宮 はい。大学を卒業するときに、もっと勉強をしようか、それともギリシア神話を世に広めるエンターテイメントに携わろうか、と考えたんです。
研究や勉強はいつまででもできる。だけど、若いうちしかエンターテイメントはできないかもしれない。私は、面白さを知ってもらうために、裾野を広げる仕事を選びました。
ただ、私も含めたオタクの世界と、本当の哲学や神話、占いの世界は、似て非なるところがあります。やはりゲームは楽しいけれど、知識がまだ足りない、もっと星占いをやってみたいと思って、伊勢山天愛先生の会社「テレシス」に応募をしたんです。
來夢 じゃあ占いをなさっている会社とご存じのうえで転職志願をしたと?
七宮 そうなんです。
來夢 14歳のときにギリシア神話と占いが結びついたけれど、全部独学だったものね。
七宮 はい。でもやっぱりルネ先生なんですよ。当時、「マイバースデイ」と「エルフィン」という占い系の雑誌がバイブルのようになっていて。そのとき占星術の原稿を書いていらしたルル・ラブア先生や鏡リュウジさんの一連の論文にも刺激を受けました。
來夢 そういう雑誌もお読みになっていたから、テレシスのことがわかっていらしたんですね。
七宮 はい。もちろんテレシスの占い師である、ミス・ペルセフォネー先生のお名前も雑誌で存じておりました。
來夢 ペルセフォネ―先生は「エルフィン」などにたくさん書いていらしたからね。実際お会いして学んだのは、ペルセフォネー先生が最初ってことかしら?
七宮:そうですね、いきなりテレシスネットワークで実践という感じでした。占いのシステムや占い原稿をプログラムに落とし込むための仕様書をつくるのが、私のテレシスでの主たる仕事でした。
來夢 この占術はちゃんとしているかどうかとか?
七宮 当たり外れや解釈はそれぞれの占い師の先生にお任せしていて、私がコントロールしていたのは出現確率ですね。タロット占いでしたらカードの出現確率にばらつきがあってはいけないですし、占星術でしたら、金星が特定の星座に入らない時期でも、恋愛運の答えがない星座があってはいけないですから、調整する必要があります。そういうことをやってました。
來夢 面白いよね。だって、ギリシア神話が好きで、星占いと結びついて、哲学を学んでいたのに、そうやってゲームのシステムみたいなことにも強いのだから。好きなことに対してオールマイティなのかな。普通、こっちは強いけどあっちは駄目とかあるじゃない?
私なんてまったくアナログだから。漫画と星占いが結びついている類のものはいくらでも言えるんです。武内直子さんが雑誌「なかよし」で『セーラームーン』を連載している同時期に、私も「なかよし」に占いを書いていて、作品を読んで占星術としっかり結びつけていたことに驚いた。
だけど、ゲームは全然私駄目ですよ。
七宮 ゲーム会社に所属していると、周りに天才的なプログラマーがたくさんいたので、仕様書を書くことに抵抗がなかったのかもしれません。
会社というところには「空白になっている仕事」がなんとなくあるものだと思います。その空白の仕事が面白くなった、というところがありますね。
來夢 柔軟力もあるということですね。テレシスにはどれくらい在籍なさっていたんですか?
七宮 9年弱くらいです。
來夢 けっこういらっしゃったんですね。テレシスを卒業したきっかけは?
七宮 「占い師としてそろそろ一本立ちしてもいいんじゃないの?」というお話を、ミス・ペルセフォネーさんからいただきました。
來夢 なるほどね。それはとてもうれしいですよね。
占い師として気をつけていることとは?
來夢 基本ベースはギリシャ神話だから、七宮さんの占術は西洋占星術ですか?
七宮 そうですね。占星術は歴史のあるものなので、理想としてはヘレニズム時代の占星術の考え方を取り入れていきたいと思っています。紀元2世紀くらいの、まさにプトレマイオスのテトラビブロスの時代のものが一番好きです。
來夢 七宮先生として一本立ちして何年目なんですか?
七宮 今年で12期になります。屋号を七宮昴という名前にして、個人事業主として登録したんです。
來夢 ちょうどひとサイクルだ?
七宮 そうですね。木星がぐるっと回ってきました。
來夢 対面のセッションもなさっていると聞いたんですけど。
七宮 テレシスの「占い師の部屋」というサイトで、チャット占いと電話占いをしています。
來夢 どうですか? 電話とチャットの占いって。
七宮 全然違いますね。電話のお客さまのほうが私がしゃべる時間が少ないです。
來夢 やっぱり電話は「聞いてください」という感じ?
七宮 それが多いですね。1回のセッションで全てを終わらせるんじゃなくて、その人が何かヒントをつかみ取るためのお土産をあげられればいいなと思っているんです。で、話を聞いて、最後にまとめの占いはするんですけど。
來夢:そうか。七宮先生にお電話を入れるとお土産をもらえる。いいですね。ところでチャットは?
七宮 チャットも基本的には同じなんですが、同時に書き込みますから、ある程度占いの結果を書いてあげられると思います。
來夢 実際に対面するより、電話やチャットのほうが、七宮先生は得意?
七宮 どっちが得意というより、どれもやりますという感じです。
來夢 やっぱり柔軟なんだよね。
電話は相手の目が見れないから、私は相当疲れる。だから電話はよっぽどじゃなければ受けないんですよ。入院しているとか、日本に来られない人とか。
こうした実占のとき、気をつけていることはありますか?
七宮 最初に良いことを伝えて、そのあと「付け足して注意するならね」と、注意点を伝えます。
來夢 どんな相談内容でも、まずはプラスのことから伝えようという感じですか?
七宮 はい。時間が経てばそうではないやり方に変えるかもしれませんが、今はそのように考えています。
最初に「注意すべき点は」とか、「良くないですね」とかいうマイナスの言葉を言ってしまうと、落ち込んでしまいますし、マイナス面にばかり意識がフォーカスしてしまうんです。
占いに来る人は、余裕がない状態で、いいか悪いかで考えてしまう。出来事をつなげて考えるのが難しいのです。だから先に注意点を言うと、「悪いと決まってるのね」と、頭を抱えるパターンが多くなってしまうんです。
來夢 電話とチャットの占いも、ベースはやはり西洋占星学ですか?
七宮 タロット占いと西洋占星術を半々くらいで使います。
來夢 タロットだと、「彼氏は私のことをどう思っていますか?」などと聞かれること、多くない?
七宮 はい。
來夢 そのときも、「どう思っているか?」に対して、最初にいいことを言ってあげる?
七宮 愚直にタロットカードに聞いて、その出たカードの良い部分をまず言います。カードの良い部分を言って、そのあと「注意することがあるならね」とつけ加えます。
來夢 どう見ても、「これは望みなさそうだな」と思ったとしても。
七宮 もちろんそういう場合もあるのですが、「占い師の部屋」の文法は、占い師の意見を言うのではなく、まず「何々というカードが出ました、このカードには何々という意味があるから答えはこうなります」という文法で話します。
來夢 じゃあどんなカードが出ても、まずはカードを伝えるわけだ。「塔が出ました」とか「死神が出ました」とか。
七宮 はい。電話やチャットはカードが見えないので、「このカードはこんな情景が描かれています」と。
「塔」のカードの場合は「強烈なカードで、転換、変換などを表しますね。彼とあなたのあいだには、思い切ったチェンジが必要なときといえるでしょう」、そういう言い方であれば傷にはならない。
來夢 確かに。それは、逆にカードが見えない電話占いの良さかもね。絵柄が見えると、勝手にみんな不安になる。別に塔なんか「目が覚める」というカードだし、全然悪いことじゃない。ただ、絵を見ると怖いから、それでドキッとしちゃう。でも、そうじゃないから説明する。大切なことですよね。
七宮 電話の場合は声が使えるので、笑い声を聞かせたりしますね。「ああら(笑)」って。
來夢 明るい気持ちにさせるわけだ。
七宮 はい。占いは当たり外れではなく、「その人が幸せになるため」というのが目的なんですね。だから、正直なところ私の占いは外れてもいいと思っているんです。それこそ、悪い答えだったら外れたほうがいいんですから。
來夢 そのとおり。だってそうよ。不幸予測が当たること自体、問題だもん。でも、不幸予測のほうが当たるのよね、引きずらて、無意識にそっちに行こうとしちゃいますからね。
七宮 それを当てないようにするのも、もしかしたら私たちの仕事かもと思っていまして。悪い予測は当てない。
來夢 それは七宮先生の格言の一つだね。
七宮 そうですね。
※Vol.16 ギリシャ神話に恋した女の子が選んだ占い師人生-その② に続く