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Vol.14 実占があるからこそ占星術は面白くなる! 知識の探求と実占の双方向で極めていく−その②

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★IMG_0369c芳垣宗久
1971年東京生まれ。占星術研究家、鍼灸師。ホロスコープを人間の想像力を引き出す思考するツールとしてとらえ、伝統にもジャンルにもこだわらない自由な研究を展開。特に小惑星やアストロ・ローカリティー(地理占星術)といった近代的なテクニックに詳しく、近年ではルネサンス時代の魔術的占星術の世界にも参入。個人相談や原稿執筆のほか、セミナー、講演も積極的に行っている。占星術スクール「ヘルメス学園」主催。主な著書『愛の小惑星占星術』(説話社)、共著に『マンディーン占星術』(説話社)。
https://munehisa-yoshigaki.com/

目次

〜その2 ホロスコープで人を記憶する占星術師のサガ〜

・オーストラリアで占い師としてプロデビュー

・創造性を発揮して占いライターデビュー!

・松村潔の門下で学び、ついに専業占い師として独立

・実占家はタロットと生年月日占いの技術が必要

・男性目線の占いに女性ニーズが多い現在の矛盾

・占い師は記録と結果を振り返ることが大切

オーストラリアで占い師としてプロデビュー

shutterstock_1025960785芳垣 25〜26歳の時、オーストラリアに1年間ワーキングホリデーに行ったんです。普通ワーキングホリデーってみんなお金を貯めて行くじゃないですか。

來夢 でもワーキングホリデーは働きながら旅行できるでしょう。

芳垣 働いても、時給が5ドル(註:日本円で約500円)あるかないか。実際はひどいんですよ。1996年当時はオーストラリアも不景気だったし。しかも所持金8万円で行っちゃったんで(笑)、帰りの航空券がないんですよ。

來夢 なんで所持金8万円なのに、ワーキングホリデーでオーストラリアに行こうと思ったの?

芳垣 先に渡航していた友達が、「アルバイトもあるよ」と。あと、一緒に住めば家賃もシェアできて抑えられるじゃないですか。もう軽い気持ちで、行っちゃおうかなと思ってビザを取って行ったんです。
現地で日本人仲間と話をしていると、「じゃあ口座にいくら入ってる?」という話題になって。みんな若いからぶっちゃけ言いますよね。看護師さんなんかは「400万円か500万円は入ってる」って。「俺は8万円だ」と言うと、「冗談だろ?」って(笑)。「路頭に迷うよ」「帰れないじゃん」と言われました。
その後、本当に、あっという間に資金が底をついちゃって路頭に迷いそうになったんです。その時に、バックパッカーで来ていた北欧の女の子が、道端でビニールシートを敷いて、タロット占いをやって、コインをもらってたんですよ。それを見て、「あ、これだ!」と。「儲かる?」と聞いたら、「クラブで遊んでケバブを食べて、宿代を払うと少し残るくらい」と言う。
そうだ、自分には占いがある! 早速オカルトショップみたいな本屋にタロットカードを買いに行きました。東洋人が物色していると気づいたお店のお姉さんが近づいて来て、「何か探してるの?」と。「タロットカードが欲しい」というと、「じゃあ、ライダーウェイト? マルセイユが好きかしら? トートがいいかしら」といろいろ見せてくれて。お金がないので一番安いので、と言ったら、マルセイユの中でも千円以下のがあったんです。「これでいいです」と。

來夢 タロットカードを買うお金があってよかったね。

芳垣 最後のお金だったんですよ。これに賭けるしかないと。
で、街に漬物や海苔などの日本食の食料品を売っている日本人向けのスーパーマーケットがあって、「あそこしかない」と。で、そこの告知板に、自分が居候している所の電話番号と名前と、「タロットと占星術をやります」と書いて貼り紙を出しました。そしたら、けっこう電話が来て。
お客さんは日本人ばかり。結婚してオーストラリア人になってる日本人女性とか。留学生や旅行者もそうですね。バックパッカーもいたし、働いている人もいた。わりとみんな相談相手がいないんですよ。あまり英語ができない人も多くて。

來夢 日本語でやってもらえたのが良かったんだろうね。それと、本当に才能があったんだね。実際問題、クチコミになるかならないかはあるもの。

芳垣 海外の日本人社会はすごく狭い世界なので、変な噂がすぐ流れるんですよ。96年当時はパソコンも珍しくて、インターネットもあまり普及していなかったし、日本の情報があまり入ってこなかった。お笑いタレントが皇室の悪口を番組で言ったら右翼団体に襲撃されたとか、そういう嘘ニュースが流れて騒然となったりして。でも友達が国際電話でお母さんに聞いたら、普通に毎日お昼の番組に出てるわよ、と言われて。
 そういう環境だったので、私が占いを始めたら、「謎の占い師がオーストラリアに来ていて、満月の日しか占わないらしい」「百発百中らしい」「超能力があるらしい」とか、変な噂がいっぱい流れたんです。でもそれがプラスになった。あとでわかったのは、一緒に住んでいたシェアメイトの日本人が意図的に噂を流していたんです。要するに、あいつが家賃を払えなくなると困るからって(笑)。そしたらお客さんが大挙して来ちゃったんです。
それで帰りの航空券が買えたんです。しかもシドニーまで行って観光もできたんです。すごいですよね(笑)。なので、人はやればできるんだと思って。

來夢 導かれてるよね、あなた。だって普通は、中学生でタロットカードをもらわないし、8万円しかないのにオーストラリアに行かないし、道端で占ってる北欧の人に会わないし、日本人マーケットで貼り紙なんてしないし。

芳垣 追い詰められた時の潜在能力ですよね。

來夢 それでめげていたら今はないよ。ちゃんとそうやって試されていたんだと思う。すごいすごい。

芳垣 旅行中に、友達にお金を借りるというのは嫌ですもんね。

來夢 そこも偉かったよ。「僕には占いがある」と思えたところとか。やっぱり人徳だし、才能もあったんだね。いくらシェアメイトが困るからって、嫌な奴の応援なんかしないよ。だって身ぐるみはがして追い出せばいいだけだもん。それに、占いそのものがダメだったら悪評に変わってたはずだもの。

創造性を発揮して占いライターデビュー!

shutterstock_658017568來夢 オーストラリアには1年間くらいいたの?

芳垣 そうですね。向こうにいるあいだ、雑誌の仕事もしました。
現地には、日本のニュースや日系人社会の問題などが書かれている、日本人コミュニティーのための、タブロイド紙のような日本語情報誌があって。存在は知っていたのですが、ある時その編集長から電話がかかってきたんです。「あなたは占いができる人ですか? 12星座のコラムは書けますか?」と。日本語で頼める人がいなかったんでしょうね。私はやったことがなかったのに、「書けます」と。
 書いてみたら、「当たる」と評判になっちゃって。ひと星座、ツイッターみたいに140文字もなかったと思います。「今月は金運ピンチかも」とか、本当に小さなコラムを面白いとみんなが言ってくれて。その後すぐにシドニー旅行に出たので、3回しか連載していないんですけど、原稿を書いたのはその時が初めてだったんです。だから実質、オーストラリアでデビューしましたね。

來夢 当たったって言われたんだから、良かったですね。

芳垣 読んでくれた人が、「当たった」と報告に来るんです。お客さんが勝手に当たったと思ってるだけか、占いを読んで催眠にかかっているだけなのか、わからないんですけど。

來夢 相乗効果はあると思いますね。

芳垣 自分で言うのもなんですけど、創造性はあったかなと思うんです。ただの12星座にしたら面白くないから、全部オーストラリアの動物に替えようと思って。牡羊座を「カンガルー座」、牡牛座が「コアラ座」、双子座がペチャクチャしゃべるオウムみたいな鳥「コカトゥ座」。蟹座は「泥ガニ座」、獅子座が「タスマニアタイガー座」。これは絶滅しているんですけどね。乙女座は「緑アリ座」、天秤座は困って「アボリジニ座」、さそり座が「サンドフライ座」。刺す虫がいるんですよ。射手座はアボリジニが使う「ブーメラン座」、山羊座が「タスマニアデビル座」、水瓶座が「カモノハシ座」、魚座を「くじら座」。オーストラリアではホエールウォッチングをよくやってるんで。ただ名前を変えただけだから、途中で「これ、ただの山羊座のことじゃない?」とバレるんですけど、ナンセンスですが楽しかったですね。
この連載のおかげで、書くとみんなが喜んでくれるという反応に初めて触れて、書く喜びを味わったんです。ライターになろうとは思わなかったけど、きっかけにはなりましたね。

來夢 そうか。ウォンバット入れなかったんだ。私の永遠のアイドルなんだけどな。でも、日本で「動物占い」が流行る前の先駆けみたいなものじゃない? あれはイラストも当たったんだよね。

芳垣 90年代は、寿司占いとかガンダム占いとか家電占いとか、わけのわからないものが流行ったので、あのノリが影響していると思います。

來夢 そうやって名前をつけたほうが浸透しやすいというのはあるじゃない? 動物占いだって四柱推命だからね。それにコアラとかペガサスとか名付けたから親しみやすくなったわけで。
 それで日本に戻ってきて、占いをどう活かしていったの?

芳垣 指圧と鍼治療の免許を持っていたので、接骨院に勤めたんです。こっちがメインの仕事で、8年間やってたんですよ。

來夢 鍼灸師になる動機はなんだったの?

芳垣 中学2年の時、鍼と占いは同時に出会ってたんですよ。父親がツボに興味があって、指圧やカイロプラクティックなどの本が家にいっぱいあったんです。ある時、父が飽きて放置してあったボックス型の電子鍼治療器を発見して、「なんだこのミラクルマシンは!?」と。ツボを探知して、電気をピピピピと流すと、鼻がスーッと通ったりするので、これは面白いと、学校に持っていきました。だから中学生の時は、占いをするか、みんなに「電子鍼」をするか、どっちかで、けっこう尊敬されてたんです。

來夢 面白い子供だ! その頃の芳垣少年に会いたかったな〜。

芳垣 陸上部の足が速くて格好いい先輩がいたんですけど、真剣に相談してきて。「俺ね、部活が始まって練習に入ると、急に頭痛が来るんだよ」って。プレッシャーなのか何なのかわかんないんですけど、「お任せください」と、電子鍼を使ったら、本当に頭痛が出なくなって感謝されました。

來夢 天の出来レースもあるよね。お父さんがたまたま家に置いといた手相の雑誌やツボの機械があって。それが繋がって、ちゃんと相談に乗って、結果出してたんだもの。

芳垣 みんなの役に立っているのはやっぱり楽しいし、うれしいですよね。

來夢 そういう話は大事だよね。だから芳垣先生のところに習いに来る子たちは幸せだと思う。芳垣さんは実占鑑定先行型ですからね。今は商売から入っちゃう人が多いだろうから。

芳垣 女性の占い師さんだと、「マイバースデー」から入った人、いません? 学校で占い少女や魔女っ子だった人、多いですよね。そういう占い好きな人もいれば、あとは他に仕事がなくて占いの世界に入ってくる人もいて。いきなり占い師って名乗れるから。

來夢 今問題になってるからね。いまネットでは、介護士の次に、占い師を募集しているんですって。占いができなくてもいいです、って。ひどいよね。

芳垣 電話占いはそうですよね。ちゃんとやっている業者もありますけど。

來夢 一方で私は、毎日8時間くらい、トイレ以外立たずにノンストップで、一人1時間ずつセッションしているでしょ。

芳垣 休むとアドレナリンが切れちゃうんですね。

來夢 ある人は、自分が欲しい答えをくれる占い師に出会うまで電話をかけまくるんですって。それがニーズで、占い師が本物だろうが偽物だろうが、どうでもいいんだろうね。望む一言が欲しいがために、10軒、20軒、30軒と電話する。たしなめられたりしたらもうダメなわけよ。そういう答えなんだと思った。

芳垣 そうですね。電話なんかで鑑定している鑑定士さんも、仕事の満足度は低いと思いますよ、そんな扱いをされるので。

來夢 そう思います。だいたい目と目を見て話せないのは100倍エネルギーを使うから、私は電話相談はよっぽどの理由がない限りお断りしちゃうもん。

松村潔の門下で学び、ついに専業占い師として独立

shutterstock_1283488957來夢 それで芳垣先生は鍼灸師をなさりながら、占いも、ということになったんですか?

芳垣 占いはあくまでも副業でしたね。大きなきっかけは、1999年に松村潔先生の「虎の穴」という私塾が始まって。松村先生の本を読んでいたので、参加したんです。虎の穴には、ライターや、占いの館の占い師など、プロでやってらっしゃる人も何人かいて。
それまでは、自分以外に占いをやってる人に直接会ったことがなかったし、占いをどうやって仕事にすればいいのか全くわからなかった。でも、みんなから占いの仕事の話を聞いて、もしかしたら自分も仕事にできるかもしれないと、何となく思い始めたんです。
そんな時、1999年くらいに、松村先生のもと、みんなで本を書こうという企画が始まって、それに乗っかったんですね。占いの連続ワークショップやイベントもやったし、みんなからいろいろ教わって、プロの占い師の仕事がイメージできるようになっていきました。虎の穴にいなかったら、占いは趣味で終わって、仕事にはしていなかったと思います。

來夢 松村先生は本当に面白い。私も90年代、松村先生の朝日カルチャーには通ってました。「虎の穴」も申し込んで一回だけ行ったけど。松村先生はスタンスが変わらないし、天然サイキッカーだし、面白い。私は、人生の大事な時に、松村先生の一言で救われて、感謝していたりすることはけっこうあります。
彼は絶対に宇宙と交信してるんじゃないかと、出会った時から思ってて。何の説明をしなくても私のことをプロだとわかって「あなたは生粋のヒーラーだから」と、講座の後にいつもお茶しに連れて行ってくれたりとか、ちゃんと嗅ぎ分けてるのかなと。

芳垣 そうですね。
2004年のある時、松村先生からいきなりメールが来て、「君、講師をやることになったから」と。占いの学校に話を通してくれて、そうやって背中を押してくださったりしました。
 当時、鍼治療の仕事をずっと続けていたんですけど、原稿の仕事も増えてきて。接骨院の仕事はけっこう肉体労働できつかったので、真剣に占いと鍼治療、どっちかにしようと。結局、占い一本に絞ろうと決断しました。それで、先生の事務所に行ったとき、「実は私、勤めを辞めて占い一本に絞ろうと思うんです」と言ったら、松村先生は喜んでくださって。周りも、「芳垣が仕事を辞めるらしい。偉い偉い」と言ってたらしいです。男の人で占い専業の人はそんなに多くはないから。

來夢 そう思いますよ。私の師匠も男の子の弟子には気をつけていたもん。結婚して子供を食べさせていくのは難しいでしょ? だから早く自立させて、という感じだったと思います。

芳垣 そうやって専業のプロになって今年でちょうど20周年になります。松村さん門下のまついなつきさんとラクシュミーさん、登石麻恭子さん、いけだ笑さんがちょうど20周年だったので、5人でイベントもやりました。

來夢 20周年とは、プロとして大人になったということですもんね。私も自分が20周年を迎えた時、「これでようやく一人前のことを言ってもいいな」と自分に許しを与えました。実占を20年やってきたからこそですよね。
それで20年前、どういうスタンスで一本立ちされたんですか?

芳垣 大きい収入は原稿料でしたね。課金制占いサイトがわーっと増え、ウェブサイトのコンテンツ事業がいちばん盛り上がった時期です。易とか手相の本がベストセラーになった60年代が第一次、西洋占星術とタロットが本格的に流行り始めたのが70年代の第二次、『マイバースデー』とか占いの館、パフォーマンス占いが流行した80年代が第三次、ダイヤルQ2とかiモードで大量の占いコンテンツが出回ったのが第四次でしょうか? 

來夢 そうか。ダイヤルQ2で一本何百万円受注みたいな時が1998年あたりなんだよね。その次のブームだ。

芳垣 2000年代はそういうウェブの仕事があったので、松村先生のプロジェクトに関わらせていただいてました。あとはおかげさまで自分の占いサイトも作っていただいて。教える仕事も豊富にあったので、それで何とか食えましたね。
最初は、食べていけないんじゃないかと、親戚みんなに心配されたんですよ。普通そうですよね。どういう仕事をしているのか想像がつかないらしいんです。駅前の銀行がしまったら街頭で辻占をしてるとか、拝み屋さんをやってるとか、本当に思ってたらしいんです。でも、説話社さんから出してもらった小惑星の自著や雑誌に書いた記事を、一番おしゃべりな伯母さんに渡したら、親戚中に見せて回って、やっと不安が収まったんですね。活字はやっぱりすごい威力でした。

來夢 それまで小惑星の本は雑誌で特集されていても本としての出版はなかったと思うから、いいタイミングだったんじゃないですか。

芳垣 そうですね。自分の名前で出してもらえたので、名刺がわりになりました。著書があると、部屋を借りる時に助かりますね。不動産屋さんに1冊渡しておくと、「本を書いていらっしゃる方ならお貸ししますと大家さんが言ってました」と。ブログも大家さんがチェックしているから、変なことは書いちゃいけないんだなと思いました。

実占家はタロットと生年月日占いの技術が必要

shutterstock_1604742001來夢 じゃあ、占い学校で教えることと、本の執筆がベースだった。あとは個人セッションはやってらっしゃるの?

芳垣 やってますよ。占いの館にいたときほどではないですが。

來夢 前はいたんですか?

芳垣 2006年くらいからかな? 二年くらいやってました。当時は原宿にまだ占い館が5軒ほどあったんですが。そういうところって、飛び込みのお客さんとか来るから、けっこう勉強になりましたよね。武者修行です。

來夢 今は個人セッションは受け付けてないの?

芳垣 してますよ。自宅近くに来てもらうことが多いのですが、先方の事務所に伺ったり、カフェでやったりもします。西洋占星術を使った風水もやるので、そういう時は物件まで足を運びます。それは間取り図にホロスコープを重ねる技で。

來夢 それは新しくて面白いですね。

芳垣 新しいですね。日本には家相とか、中国風水とかもありますが、占星術ををベースにしたやり方もあるので、私はそれをやっています。

來夢 それはホームページで申し込まれるんですか?

芳垣 そうですね。

來夢 中学生の時は手相とタロットが入り口だったのに、どうして西洋占星学に行ったの?

芳垣 占星術は20代に入ってからなんですけど、その時木星王先生の本を読んだんです。そしたら先生は実占家で、神戸で「魔女の家」を運営していると。面接もやってる。採用する人の基準として、具体的なことも書いてあったんです。占い師は複数の占いができないと通用しない、まずはタロットをすすめているけれど、それ以外に生年月日を使った占いができないと、プロとして食べていくのは難しいと。そういうものなんだと思って。
生年月日を使った占いは、数霊学や四柱推命、九星気学もありますし、西洋占星術もそうですよね。で、本屋に行って一通り買って読んだんですけど、自分にとっていちばんやりやすいのは西洋占星術かなと思いました。

來夢 タロットと馴染んでいるしね。

芳垣 そうですね。タロットと黄金のコンビというか。それを組み合わせてやっている人も多かったし。四柱推命は挫折しましたね。向いていなかったみたいで。ただそれだけの理由です。

來夢 個人的に見てあげる時に気をつけていることは何かありますか。

芳垣 20年を振り返ると、やり方やスタイルは変わってきていると思います。もとは占いオタクなので、とにかく占いをすればいいんだと思ってたんですけど、お客さんにもいろんな事情、ニーズと言いますか、あるんですよね。
だいたい5つのパターンがあります。ひたすら話を聞いてほしい人、何も喋らない人。何か言ってほしいとか、具体的な情報が欲しいとか理由はそれぞれ。あと、何をアドバイスしても絶対その通りにしない人もいれば、全部言った通りにする人もいます。それは依存的な人ですね。あと、答えは決めていて、占いの結果を聞いて、「やっぱりそうだよね」とパッと帰っちゃう人もいます。
占いを信じているわけではないけれど、暇つぶしの人ます、一定数。

來夢 街だとあるかもしれないですね。ちょうど時間が空いてるからとかね。

芳垣 そうですね。気分転換というか。あと、真剣に占星術を勉強していて、試しに来るみたいな人もいます。
 けっこうタイプがありますよね。だから、自分のやり方を押し付けるというよりは、その人に合わせてやったほうがいいかなっていまは思います。

來夢 相手次第ってこと?

芳垣 そうですね。ポリシーがないような感じなんですけど。

來夢 私も同じですよ。だって、向こうが何を望むかだもん。求めに応じますよ。

芳垣 ただ最初に始めた頃は、とにかくまず5分で悩みを聞いて、5分以内に分析して、ハウスの順番で意味を伝えていくとか、クソ真面目にやっていました。でも、そんなのやっても意味ないじゃないですか。お客さんが聞きたいこととずれることも多いし。話を聞いてくれるだけでいい人もいるので。

來夢 その当時からちゃんとミニミニセミナーを開いていたようなものですね。

芳垣 そうですね。研究が好きなのかもしれないですね。記録をとって後で分析するのが好きで。それは今でも変わらないですね。
みんなそれぞれ人生観や宇宙感があって、それを考えてあげないとうまくいかないんだろうな、というのはありますね。
最近わりと流行っているのが、強く念じると実現するという考え方。それを信じている人には、その価値観を大事にしてあげるのも大事です。宗教に入っている人はその価値観をちゃんと尊重しないとダメですね。
占い師のところにはいろんなお客さんが来るんですけど、個人が大切にしている価値観は、ある程度考えながらやらないと失敗するというのが経験でわかってきましたね。

來夢 柔軟力だね、芳垣先生の良さは。

――どう見ても悪い象意の時はどうアドバイスします?

芳垣 人によるんですよね。自分に自信がある人は、占い師に言われたくらいでは全然平気なので、ちゃんと言って大丈夫なんです。「そうですか、気をつけますね」くらいで終わっちゃう。でも本当に弱ってる人とか、明るいことを言っても褒めても不安になるような不安心理が強い人は、ストレートに言わないほうがいいなとか、タイプに合わせますね。
 あと、若い子だったらチャレンジさせてOKですね。相性悪くても「つき合っちゃえ!」と(笑)。向いてない仕事でも、「そんなにやりたいんだったらやっちゃえ」って。20〜30代はそれも経験だから平気。

來夢 経験は力だから。命を取られないんだったらたくさん転んだほうがいい。苦労は買ってでもしたほうがいい。私も、サターンリターン(土星回帰)前の人だったら、やりたいならやっちゃいな、だね。

芳垣 でも40代、50代になってくるとそうはいかなくて。

來夢 ダメージがね。

男性目線の占いに女性ニーズが多い現在の矛盾

shutterstock_1234292191來夢 男性と女性、クライアントさんはどっちが多いの?

芳垣 圧倒的に女性なんですけど、男性と人生観が違うので、そこは考えないといけないなと思います。
 男性と女性でいちばん違うのは、女性のほうが忙しいといいますか。女性らしくもありたいし、社会的にも成功しなきゃいけないとか、複雑ですよね。

來夢 子供を生めるのが女性だけなので、特権である分、大変ですよね。

芳垣 そうなんですよ、むしろ女性のほうがいろんな要素があって。男のほうがシンプルかなって思う。

來夢 おっしゃる通りだと思う。

芳垣 で、男の人が、「それくらいできるだろう、お前」と言うのはちょっと失礼だし、それは考えないといけないなと。男性占い師と話をしていると、やはりそういう話題になるんですね。
 どちらかというと女性は女性占い師のほうが好きですね。共感してもらえるので。
最近思うのが、西洋占星術がその典型なんですが、多くの占いが男性的にできているということ。男性が作ってきたものなので、女性のことは少ししか書いていない。でも現実のユーザーは女性が圧倒的に多いという、不思議な世界なんです。田中要一郎さんが訳した『クリスチャン・アストロロジー』にも、出世についてとか、妻はどんな人なのかは詳しく書かれているのですが、申し訳程度に「女性の場合は……」と出てくるんです。多分全体の三分の一はないと思います。

來夢 男目線で書いてある。木星王先生も、占いを始めた50年前は東洋占術が主流だったけど、東洋占術は男尊女卑的なネガティブな言葉が多くて嫌になった、とおっしゃってたの。それとつながるかも。

芳垣 そうなんですよ。たとえば、仕事を辞めると負け、みたいな話とか。負けでもなんでもないのに。そういう発想はありますね。西洋占星術も本来は男尊女卑的な要素はあるんです。
ただ、西洋占星術がちょっと違うのは、70年代以降、アメリカヨーロッパでフェミニズム運動がかなり盛り上がったので、占星術もフェミニズムからすごく影響を受けたんです。だから女性のことをちゃんと考える占星術の研究が欧米では出てきていますね。とはいえ、まだまだ女性のことはちゃんと考えなきゃなと私は思ってますね。

來夢 なるほどね。

芳垣 小惑星を入れて占うのは、フェミニストが始めたんです。よく知られているセレス、パラス、ジュノー、ベスタの4大小惑星は全部女神ですよね。でも、太陽系の10個の天体は、女性が月と金星しかいない。木星も土星も天王星も海王星も、全部男性の神なんです。いかにバランスが悪いか。

來夢 確かに、星に女性性男性性があっても、神様は男だもんね、みんな。

芳垣 そうなんです。これはいかがなものか、と思われていたのが、そこに4つの女神天体を入れればイーブンになるという。これはエレノア・バックというアメリカ人が初めて提唱したことなんです。
私は、小惑星の占いを始めてから、そういう文献を読んでいるうちに、フェミニズムの影響を受けた占星術の流れがあるんだなと気づいて、そこは考えていかないといけないと思うようになったんです。

來夢 芳垣先生の見識の広さ、好奇心はやっぱり面白いよね。

占い師は記録と結果を振り返ることが大切

shutterstock_622486091――「記録をとって分析」というのは、どのようにするんですか?

芳垣 生まれた時のホロスコープも読みますし、質問が来た時にホラリーと言うのをやります。たとえば、「犬がいなくなったんですけど、どこにいますか?」と言う質問に、ホロスコープを作って、チャートを見ながらアドバイスをします。どうやって自分が判断したかをちゃんと書いておかないと、失敗した時にどこがいけなかったのか反省できないし、成功したときは蓄積にならない。
長くこの業界にいて達人みたいになっている人が何をやっているのかなと思ったら記録をとっているんですよ。易にしろ、手相、人相にしろ。占星術もそうですね。自分の判断と結果を照らし合わせて、必ず反省会をやってるんです。

來夢 すごい! 私は25年もやってるのに記録はとってない。でも、クライアントのことは私が記憶している。それが自分の仕事だと思ってるのね。とどのつまり、どこから問題が始まっていたかと言う話をしないと、今の状況や解決策が明確にならない。喉元過ぎれば、前向きな子ほど忘れちゃうの。それじゃ一つも成長しないのよ。私は何も書き残していないけれど、その人が忘れてることも私は引っ張ってこれるの。

芳垣 それは記録しているのと同じなんですよ。ノートに書かなくても、記録する感覚で聞いているので、書かなくても残りますよね。

來夢 髪の毛や体型で別人のように変わることもあるけど、ホロスコープは嘘をつかない。まあこれも、向いているか向いてないかの体質であろうと言ったらそうなんでしょうけど。歯科医は、患者の顔は見てないけれど、歯を見るとわかると。そう言うのと同じなんでしょうね。

芳垣 お客さんのお顔を覚えていなくても、チャートを見たらお話した内容をありありと思い出したりすることもありますもんね。

來夢 個人のディテールの細かいところ、それが教科書になり、生きている勉強なのよね。教科書でいくらアスペクトについて読んだからといって、本人の星とどう繋がるかは実占でしかわからない。

芳垣 そうですね。たぶんライターさんはそう言う経験があまりないから、自分の身近な例しかなくて、教える内容もないし、話してても面白くないんですよ。
 私は特に人に関心があるわけでもなく、人並みだと思います。でも、クライアントの7〜8年前の引っ越しの時の間取り図が資料に残っていて。次の引っ越しの時、ちらっと見えたら、「それ、前の家の見取り図ですよね。ずっと取ってるんですか?」と言われて。「いや、研究するので」と言ったんですけど、そこまで自分に関心を持ってくれてたと思われて、感動されたことがありました。

來夢 私は人の顔と名前が覚えられないの。「あの時はありがとうございました」と言われても全然覚えてなくて、困った顔になってしまう。それが向こうに伝わっちゃうじゃない? それが嫌で、パーティーとかほとんど断ってる。でも、セッションに入った瞬間、全部思い出して、よくそんなことを覚えてくれてますね、とか言われる。不思議よね、あれ。(了)

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